名前の由来は諸説ありますが、一説には腹部の市松模様をトウモロコシ(インディアンコーン)に見立て「コーンスネーク」と呼ばれる。ほかにも「レッドラットスネーク」「アカダイショウ」の名がある。
生息地ではダイオウマツ(Pinus palustris)から成る平地林をはじめ、草地、耕作地、人家周辺などさまざまな環境で見られる。低地の乾燥した松林や草地に多いとされますが、分布地南部では熱帯林や湿地帯など湿った環境にも生息する。半地中性とも云われ、自然下では穴の中や倒木の下で過ごすことが多い。人の存在や環境になれやすい蛇ですが、飼育下でも本来の隠棲的な性質までは失われず、シェルターの中や水入れの陰などに身を置いていることが多い。また特に幼体期において、本種はよく土に潜りますが、環境になれるとあまり潜らなくなる。木登りもうまく、特にフロリダキーズの個体群では、かなり樹上にも進出している。
かつて、前述のフロリダキーズの個体群(キーズコーン/Elaphe guttata rosacea)や、テキサス東部やルイジアナに分布する個体群(キサッチコーン/Elaphe guttata slowinskii)、ミシシッピ川の西側からメキシコ北部にかけて分布する個体群(エモリーラットスネーク/Elaphe guttata emoryi)など、本種にはいくつかの亜種が知られていました。
現在ではエモリーラットが独立種となり、キサッチコーンはその亜種ないし独立種に、ほか個体群もコーンスネークの亜種としては認められておらず、現状コーンスネークに亜種は存在しません。
いずれにしても、個体群問わずコーンスネークの名で流通する蛇は、基本的には非常に飼いやすい。本種は飼育下への適応力が高く、カリフォルニアキングスネークと並んで入門種とされることもあります。ただし幼体時は弱い面もあり、一定の注意が必要です。
本種はナミヘビとしては中型種で体がそこまで大きくありませんが、小さめの卵を数多く産む傾向があり、孵化仔のサイズもそれ相応の大きさしかありません。ときに全長25cmにも満たないような極小サイズで生まれ、そういった仔は細心の注意を要します。さらに餌付いていない場合などは、難しい部類に入るでしょう。基本的にある程度育ってしまえば丈夫で、温和で扱いやすい個体が多いです。
▼形態
体鱗列数25-29、腹板数203-245、尾下板数47-84。尾は全長の13-18%。
体色はおもに発生場所によって異なり、オレンジから赤茶、灰などを基調とした色彩型が存在する。背中には、黒で縁取られた暗赤色の斑紋が規則的に並ぶ。この斑紋は鞍に似た形をしており、そのまま「サドル」または「ブロッチ」と呼ばれる。体側部には、より小型の斑点がある。
全長は80-183cmとされますが、飼育下では120-130cm±、大きなものでも~150cm程度の個体が多い。
地域によって体型、色彩、ブロッチの数に差異がありますが、品種作出の過程で、一定の形質は限りなく失われていると思われる。ただ場合によっては、たとえばフロリダキーズ由来の品種は体型が細いなどの傾向があります。
▼飼育
普通は手頃なケースに乾燥系の床材を敷き、水入れを設置するだけで飼えます。床材は土など最初から湿り気のあるものも使えますが、基本的に表面は乾いた状態で使用し、あくまでも空中湿度を保ちます(60-70%±)。本種は脱皮不全もほとんどないため、産卵以外で湿度を気にする場面も少ないと思いますが、状態が落ちた個体においては、この限りではありません。経験上、生体が痩せて弱っていたり、吐き癖がついていたりと、総じて「脱水」の疑いがある場合に、湿度を意識した環境で改善することがあります。自然下でも、それなりに湿度の保たれた場所に隠れていることが多いようなので、乾燥系の床材で飼育する際にも、理想は水苔タッパーぐらいは用意したほうが良いのでしょう。
水入れは、保存容器の蓋に円形の穴を開けたものが広く利用されています。これは多少の振動でも水がこぼれないため、アスペンなど乾燥系の床材を使用する際に重宝します。土を使用する際は、水入れの水を溢れさせるなどでケースの一部を湿らせると、簡単にケース内の湿度を上げることができます。なお水を溢れさせる場合、水入れは蓋のないものがおすすめです。
どのような環境で飼育するにしろ、つねに通気性は意識しましょう。たとえばケージの一部が「メッシュ」か「ガラス」かだけでも、その環境に与える影響は非常に大きく、湿潤環境ではダニの発生率などに顕著に関わります。
シェルターはなくても構いませんが、ウェットシェルターや植木鉢を加工したもの、コルク樹皮や流木、水苔タッパーなどが使えます。補足として、タッパーに入れる水苔はわずかに湿っていれば良く、水苔がふんわりとした状態で使用し、蛇が潜れるようにしましょう。
飼育温度は26℃前後で、30℃程度を上限とし、冬季は成蛇であれば無加温での冬眠も可能です。基本的に本種の飼育で特筆すべき点はあまりなく、ナミヘビ飼育の基本に準じていれば、特に大きな問題は起こりません。
-給餌
幼蛇は3-5日に一度orフンをしたら与え、成蛇であれば7-14日に一度で問題ありません。コーンは飼育者が多く、各サイトで「Feeding Guide」も公開されており、与える餌のサイズや頻度はそれに従っても良いでしょう。
幼蛇の初動成長は顕著であり、特に最初の一年は急速に成長します。本種を使った実験では、餌を倍与えたほうの幼蛇のグループは、体重の成長率が倍以上に、長さは倍近くまで成長したそうです(Growth Rate Data Of Snakes Fed Once And Twice A Week)。のちにその個体のポテンシャルなどで、大きさはバラつくようになるとは思いますが、少なくとも最初のころの成長率は、与えた餌の総量と密接な関係があります。
▼繁殖
本種は繁殖の際に必要とする温湿度や光周期の変化、飼育スペースなどの条件が全体的に緩く、適当な容器に雌雄を同居させておくだけで、いつの間にか卵を産んでいることすらあります。本種本来の性質にくわえ、累代繫殖の賜物とでもいうべきか、とりあえず雌雄が健康であれば、たいていは容易に繁殖まで持っていくことができます。
-クーリング/冬眠
単独飼育で状態を整えたのち、冬眠やクーリング後にペアリングさせるのが無難です。繁殖に用いるメスは、冬眠前の段階で、すぐにでも卵を産めるような状態に仕上がっている必要があり、冬眠後に多量に食べさせて体重を増やすのでは遅く、その場合あまり良い結果が得られないこともあります。
冬眠は「アオダイショウ」と同じような温度帯で可能とされていますが、特に南方の個体群では一抹の不安もあります。個人的には15-18℃程度で2-3ヵ月のクーリング(冬化処理)が安全だと思います。しかしながら本種は、繁殖の際に冬眠やクーリングが必須というわけではありません。何となく春先にペアリングをするだけで、交尾が見られることも多々あります。
-交尾
交尾時間は多くの場合20-40分、平均25分と比較的短い。普通はこのたった一度の交尾で卵を産めます。オスは3-4月ごろから発情し、個体によっては食欲が減退することもあります。先述の通り、発情はクーリングや冬眠の有無とは関係ないことも多いです。基本的に雌雄とも状態に問題がなければ、容易に交尾は見られます。交尾がうまくいかない場合は、そのまま一緒にして様子を見るか、後日ペアリングしましょう。
-妊娠/産卵
産卵は交尾から30-60日。メスは全長約120cm、350-400g程度まで育っているのであれば、交尾後に頻繁に給餌をしなくても、良い卵を産めるはずです。
余談ですが、飼育下において「個体数を多く管理しているブリーダーのほうが、良い卵を得られやすい」という話を聞いたことがあります。これは飼育の腕というよりは、ひとつの個体に時間をかけられないために、個体との接触頻度が低く、結果的に蛇がストレスや肥満などの余計な問題を抱えにくいためです。飼育下に置かれているというだけで、餌を与えすぎていることも多いので、妊娠したところで普段通りの給餌頻度でも、たいていは問題ありません。
卵は多くのナミヘビ同様、暗く湿った場所に産みます。産卵前に脱皮をしますが、生理的なものなのか本種は産卵後にも脱皮をします。稀にこの産卵後の脱皮の兆候が、卵を産む直前に現れることもあるため、そういう場合は目が白濁りした状態のなか、卵を産みます。
-孵卵/孵化
パーライトと水の比率を1:1で問題なく孵化します。
孵化期間は孵卵温度によって51-90日までと幅がありますが、27-28℃平均だと65日前後で孵化します。孵化仔はそのまま一緒にしておくと稀に共食いすることがあるそうです。できれば、孵化直後から個別に管理したほうが良いでしょう。
・コーンスネークの孵卵温度と孵化期間
()内は対受精卵孵化率
24-29℃------57日 (12/12) 64日 (15/15) 65日 (17/17) 66日 (2/2) 67日 (6/7) 70日 (15/15) 70日 (1/1)
孵卵温度に幅がありますが、多くのクラッチは大体27-28℃を基底としており、そこから時間帯や日によって数℃の変動があります。この中には有精卵が僅かしかとれなかったクラッチも含まれており、コーンとはいえ結果が芳しくないことも多々ありました。しかし、有精卵さえとれてしまえば、その孵化率自体は非常に良い蛇です。
-幼蛇/餌付け
孵化仔の全長は25-33cm、体重は4-10g程度ですが、これらの基準に満たない仔も存在します。ファーストシェッドは約1週間。管理自体はアオダイショウとほとんど変わりませんが、とにかく孵化仔のサイズが小さいため、吐き戻しを絶対にさせてはいけません。特にピンクマウスを丸呑みできないようなサイズの場合、最初の給餌にすべてがかかっているともいえるでしょう。
餌付きはかなり良いほうですが、さまざまな要因で自力で食べないこともあり、冷凍のヤモリを部分的に切ってマウスにニオイ付けしたり、怒らせて食いつかせるなど、自力で何とかするしかありません。最終的にはピンクマウスを半分に切ったものや、マウスの尾などをアシスト、または強制給餌することになるでしょう。しかし多くの場合、デリカップに餌と生体を一緒に入れ、餌にアクセスしやすくすることで数時間以内には食べます。その際には、必ず容器に通気口を設けましょう。
コーンスネークは最初に飼う蛇として選ばれることも多いですが、吐き戻しや吐き癖などの経験は、ほかのナミヘビと比べてみても、幼体の本種で意外と多かったです。
参考文献
・鳥羽通久 2003. コーンスネークの分類と生態. ハ・ぺト・ロジー Vol. 1, 113-116.
・Griswold, W.G. 2001. Captive care and breeding of the Corn Snake, Elaphe guttata. Journal of Herpetological Medicine and Surgery 11: 35-40.































